日時:2016年7月6日(水) 18:15-20:00
場所:早稲田大学戸山キャンパス 33号館3階第1会議室 (参加無料)
『ヴァルター・ベンヤミン―写真とファンタジーについて』
本発表ではヴァルター・ベンヤミンのファンタジー(Phantasie)の概念を、その効果が変形(ディフォーメイション)において感じられるところの受容的もしくは非生産的イマジネーションとして論じる。さらに、ファンタジーがベンヤミンにとって、写真という新しいメディアの偉業の性格付けにいかに役立っているのかを、詳細に論じることとする。その性格付けは、カール・ブロスフェルトの『芸術のオリジナル・フォーム―1928年の植物写真のイメージ』に関するベンヤミンの書評においてなされている。卑見によれば、ベンヤミンによるブロスフェルトの植物写真の評価は、ゲーテの科学的方法のコンテクストにおいて、そして特に一次現象もしくは経験における原型(アーキタイプ)の表現方法との関連において、なされている。そこで、写真がファンタジーと科学的実践とを合同させるために提供する新しい可能性を強調するために、ベンヤミンをフォローし、さらにはブロスフェルトの植物世界の表現を、花の世界からの人的世界の出現というグランヴィユのカリカチュアと対比する―そのカリカチュアはグランヴィユの『擬人化された花々』(『魂を付与された花々(レ・フレール・アニメ)』1847年)において見られる。最後に、写真におけるファンタジーの説明を、ベンヤミンの有名な視覚的無意識の概念と合流させることを試みる。
プロフィール:
イスラエル・テルアビブ大学ラウラ・シュヴァルツ=キップ近代哲学教授。主要著書は以下のとおり。
*『感覚の記号―ヴィトゲンシュタインの「論理哲学論考」を読む』ハーヴァード大学出版局,2001年
*『J.J. ルソー―言葉の来世』ハーヴァード大学出版局,2005年
*『ヴァルター・ベンヤミン―哲学的ポートレート』ハーヴァード大学出版局,2011年
*『判断力の表現―カントの美学に関するエッセイ』ハーヴァード大学出版局,2015年
現在の研究テーマはヴァルター・ベンヤミンのアーケード・プロジェクトである。